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3話 奇跡の治癒と新たな出会い

Penulis: みみっく
last update Terakhir Diperbarui: 2025-06-24 18:13:22

 ——奇跡の治癒と新たな出会い

 護衛兵は俺を怪訝な目で見つめ、掴んだ肩を強く引いて少女から遠ざけようとする。その手のひらが、俺の肩に食い込むほどの力だった。

「邪魔しないでくれ!助けたくないのか?」

 俺の言葉に、貴族の少女を抱きかかえていた護衛の一人が、苦渋に満ちた表情で呟いた。その顔には、一縷の希望が灯ったようにも見えた。彼の口から、掠れた声が漏れる。

「……頼む……助かるのか?……どうか、助けて下さい……」

 その必死な願いに、俺は冷静に答える。

「俺の邪魔をしなければ、助かるかもしれない……」

 その言葉を聞いた護衛兵は、顔色を青ざめさせながらも、すぐさま周囲に目を配り、群衆を押しとどめるように指示を出し始めた。

「分かった。誰にも邪魔はさせないようにしよう! 頼んだぞ!」

 人々のざわめきが少し遠のき、空間が作られる。その様子を確認してから、俺は再び少女に近づき、その容態を詳細に確認する。

 意識はほとんど残っていない。息は浅く、体温も冷たい。そして……おびただしい大量の出血に、内臓まで達している傷。

 俺はすぐに治癒ポーションを取り出し、きらめく琥珀色の液体を傷口に直接それを振りかける。すると、まるで魔法のように、血がみるみるうちに止まり始めた。あの深く切り裂かれた腹部の傷が、あっという間に塞がり、他の小さな傷や生々しい傷跡までもが、まるで最初から存在しなかったかのように消え失せたのだ。肌は透き通るように滑らかに戻っている。

 そして、もう一本を自分の口に含み、ゆっくりと唇を重ね少女の口の中に流し込んでいった。甘い香りが微かに漂い、弱々しいながらも、少女が少しずつ『……コク。……コク。……コクリ。コクリ。』と飲み込む反応を示した。

「よしっ!これなら大丈夫そうだな……」

 俺は安堵の息を漏らした。このポーションは、やはり規格外の効力を持っているようだ。

 「これで一安心だな。あとは……体力回復ポーションかな」

 大量の血を失い、体力も落ちているだろう。俺は再び体力回復ポーションを口移しで飲ませた。甘酸っぱい香りが口内に広がる。すると、見る見るうちに少女の顔に血色が戻り、青白かった肌に健康的な赤みが差していく。やがて彼女の瞼がゆっくりと開いた。透き通るような青い瞳が俺の視線と絡み合うと、少女の頬がほんのりと赤く染まる。そして、無垢な表情で俺の首に手を回し、チュウ……♡と甘い音を立てて吸い付いてきた。

「おいっ。元気になったんだったら自分で飲んでくれ」

 俺は戸惑いながら言った。唇に彼女の柔らかな感触が残る。まさかキスされるとは。

「いえ……まだ具合が……うぅ……めまいが……しますわ……」

 少女は上目遣いで訴える。その瞳は潤んでいるが、どこか茶目っ気も感じられる。完全に治癒ポーションを使ったんだぞ?それに体力回復ポーションまで使ったんだ。具合が悪いわけがないだろう……ただ甘えているだけだろ。

「元気じゃないかよ」

「そう仰らずに……お願いしますわ」

 少女はさらに甘えた声を出す。俺に甘えてるいるのか? こんな金髪で透き通るような青い目をした、可愛らしい少女が。いや、今は同じくらいの歳に見えるが。

「はぁ……」

 俺は照れ隠しで、わざとらしくため息をついた。まあ、可愛いから俺は構わないけどさ。でも、皆が見てるんだけど、貴族の娘っぽいのにそれでいいのか? 周囲の視線が突き刺さるような気がした。

 俺は何度も口移しでポーションを一本全て飲ませた。その度に、ミリアは満足そうに目を細めた。

「よし。これで大丈夫だろ」

 外では、少女が元気になったのを見て、周囲の人々から「おおっ!」「奇跡だ!」という歓声が巻き起こった。人々が興奮して近寄ろうとするのを、先ほどの護衛と使用人たちが必死で抑えている。彼らの表情には驚きと安堵が入り混じっていた。

 頬を赤く染めた貴族の少女が、俺の服の裾をぎゅっと掴んだ。その手のひらは、小さく、しかし温かい。

「ありがとうございます……お名前を」

「俺はユウヤだけど……」

「わたくしはミリアと申します。ユウヤ様ですか……素敵な御名前ですわ」

 ミリアはうっとりとした表情で、俺の名前を繰り返した。傷は治ったが、服は元に戻らない。切り裂かれた腹部の肌が露わになっていて、正直、俺の視線はそこに釘付けになってしまう。そこで、俺は羽織っていた上着を脱ぎ、彼女にそっとかけた。上着からは、俺の体温がまだ残っているはずだ。

「傷は治ったけど、服までは直らないから、上着で隠しておいてな」

「きゃぁ♡ はわ、わわぁ……♪」

 ミリアは頬をさらに赤く染め、自分の血まみれのドレスを見て恥ずかしそうにしながら、深々と頭を下げて礼を言った。その仕草は優雅だ。まだ何か話したそうにしていたが、その時、護衛の男がミリアが無事であることを確認し、安堵の表情で深々と頭を下げてきた。

「本当に……あの傷を治していただけるとは……有難う御座います!」

「俺は外の兵士たちも見て回るから」

 俺は立ち上がって言った。

「そうですか……本当に感謝いたしますわ。ユウヤ様……兵士の治療までしていただけるのですか……」

 ミリアは驚いたように、そして感動したように俺を見上げた。少女とお付きの者、護衛の人々からも重ねて礼を言われた。

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